
[ハワイ進出した実現者インタビュー]
Yasunori Sakurai(桜井 保典)
SAKURAホールディングス 代表
桜井さんが初めてハワイを訪れたのは大学3年、21歳のとき。友人と二人で出かけた初海外でした。2月の寒い日本から飛行機を降り、ハワイの空気に触れた瞬間——「なんて気持ちいい場所なんだ」と身体が先に反応したと言います。その感覚は、40年以上経った今でも鮮明です。
さらに大きかったのは、高校時代の知人がハワイ大学に留学していたこと。観光スポットを巡るのではなく、ローカルの生活に近い場所で過ごし、食べ、動く。いわゆる“旅行のハワイ”ではなく、“暮らしに近いハワイ”を最初に体験できたのです。ハワイはただ憧れる場所ではなく、「過ごす場所」「整える場所」になり得る——その原点が、この21歳の体験にありました。
このとき芽生えたのは、派手なリゾートへの憧れではなく、気候・空気・人の距離感がつくる“生活の心地よさ”への確信。後に年の半分をハワイで過ごす2拠点ライフへ進む桜井さんの軸は、すでにこの時点で生まれていたのかもしれません。

海外旅行の成長期を現場で支えた23年——「人が海外でどう動くか」を見続けた
1986年、桜井さんは日本通運株式会社に入社。配属は旅行事業部、通称「日通旅行」でした。日本が海外旅行の拡大期に入り、パッケージツアー市場が大きく動いていた時代。航空会社主導の「ジャルパック」に対して、旅行会社主導の「ルック(LOOK)」が広がり、海外旅行が一気に一般化していく転換期でもありました。
桜井さんが担当したのは、企業研修旅行や海外派遣など、個人旅行よりも“実務性”の高い領域。添乗員として年10回以上海外へ赴き、23年間で訪れた国は30カ国以上に及びます。通関、関税、ビザ、現地での移動手段、緊急対応——一般的な観光では見えない「海外で人がどう動くか」を現場で積み重ねてきました。
この経験はのちに、ハワイ長期滞在ツアーを設計する上で大きな武器になります。旅行とは「行くこと」ではなく、「安全に、気持ちよく、継続して過ごせる仕組み」をつくること。桜井さんの視点は、最初から“生活者”の目線で出来上がっていきました。

「好き」を事業に変える——独立と長期滞在ツアーの立ち上げ
2009年、桜井さんは独立し、総合旅行業「SAKURAツーリスト」を設立します。最初に手がけたのはシェアハウス・ゲストハウス事業。そして、ハワイとバリを軸にした長期滞在型ツアーでした。「やっぱり、自分が好きな場所でやりたかった」。その言葉はシンプルですが、実は非常に強い経営判断でもあります。
当初はハワイとバリの両軸でスタートしたものの、長期滞在という観点で見ると、徐々にハワイへ軸足が移っていきます。理由は明快でした。気候と過ごしやすさが、圧倒的にハワイだったから。日常として滞在する場合、天候の安定感、移動のストレスの少なさ、安心感は“滞在の質”を大きく左右します。
桜井さんが作りたかったのは、豪華な旅ではなく「続けられるハワイ」。特にシニア層にとっては、観光の刺激よりも、身体が整い、心が落ち着く時間のほうが価値になる。そこで“長期滞在”という切り口が、ハワイと相性良くはまっていったのです。

年の半分をハワイで過ごす2拠点ライフ——「気候に合わせて動く」だけで暮らしが変わる
現在の桜井さんは、年の半分(約6ヶ月)をハワイで過ごす2拠点生活を実践しています。夏は日本の猛暑を避けてハワイへ(6〜9月)。冬も寒さを避けて再びハワイへ(12〜2月)。さらに12月はホノルルマラソン参加者のアテンドなど、仕事とも自然に連動する形を作っています。春と秋は日本で生活と仕事を展開。つまり「気候」と「仕事」を掛け合わせ、無理のない循環を設計しているのです。
「気候に合わせて動く。それだけで生活の質は大きく変わります」——この言葉が示すのは、贅沢ではなく合理性。暑さ寒さという体への負担を減らすだけで、睡眠、体調、気分が整い、結果として仕事のパフォーマンスも上がる。ハワイの価値を“観光”ではなく“生活品質”として捉えている点が、桜井さんらしさです。
そして重要なのは、この2拠点ライフが「特別な人だけのものではない」という視点。ハワイで暮らす仕組みを作れば、年1回の旅行よりも現実的に“長く過ごせる”ケースもある。ここからが、桜井さんの真骨頂です。

「ハワイは高い」は本当か?——月$2,000で暮らす“設計”という発想
ハワイと聞くと、多くの人が「物価が高い」「長期滞在はお金がかかる」と考えます。確かに家族旅行なら200万円規模になることも珍しくない。でも桜井さんは、その前提に疑問を投げかけます。「本当にそうなのか?」と。
桜井さんが提案するのは、月2,000ドル(約30万円)で暮らす長期滞在モデル。内訳は驚くほどシンプルです。住居はシェアハウスで約$750/月。食事は自炊中心。外食を“減らす”のではなく“選ぶ”。そして小さな工夫として、マクドナルドのアプリで$1以下のコーヒーを活用する——こうした“知識と設計”で、ハワイを現実的な生活圏に落とし込むのです。
「ワイキキのホテルロビーで海を見ながらコーヒーを飲む。それだけでも、十分ハワイを感じられる」
ここで大切なのは、節約根性ではありません。むしろ逆で、“何に価値を置くか”を決めること。観光の豪華さを追うのではなく、ハワイの日常の豊かさを味わう。設計が変わると、ハワイの意味が変わります。

旅はまだ終わらない——ハワイ長期滞在の先にある「宇宙から地球を見る」夢
桜井さんは、現地コミュニティにも積極的に関わっています。ハレの会(ハワイアロハライフ協会)に参加し、人とのつながりを広げながら、ハワイでの過ごし方そのものをアップデートしている。滞在の質は、場所だけではなく“関係性”で深まる——その実践でもあります。
月2,000ドルの暮らしと聞くと「我慢の生活」を想像するかもしれませんが、桜井さんは「むしろ逆」と言います。観光では見えない時間の流れ、ローカルの空気、自分のペースで過ごす日々。これこそが“贅沢ではないけれど、豊か”なハワイライフ。その可能性を「情報と設計で実現できる」と示してくれました。
そしてインタビューの最後に尋ねた「これからの夢」。返ってきたのは意外な答えでした。
「宇宙に行ってみたいですね。外から青い地球を見てみたい」
30カ国以上を巡り、人がどう生きるかを見てきた視点が、今度は地球の外へ向かっている。年齢や常識に縛られない“旅人の純粋さ”がそこにありました。ハワイでの長期滞在も2拠点ライフも、すべては「どう生きたいか」を自分で選び続けた結果。桜井さんの旅は、まだ終わりません。
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